本と生涯
晴れのち雨。終日仕事。
連休が明けたと思ったら、もうすぐ週末だ。
ずっと仕事だから関係ないにしても、何か調子狂うな。
宇野弘蔵著「資本論に学ぶ」を読了。
最近よく本を出している佐藤優氏が資本論について語るときに必ず名前が出てくる宇野弘蔵先生の講演と対談をまとめた本。
自分自身は自然科学を専門にしているので馴染みがないが、子供の頃、親から経済を志すなら、真っ赤な東大ではなく、明快な数式で理論構築した近代経済学の一橋大学に進むべしというようなことをいつも言われていた。
もっとも、ソ連自体が小学校に上がった頃にはとっくに崩壊していたから、東大もとっくに真っ赤ではなくなっていたと思うのだが・・・
それにしても、最高学府で官僚養成学校であるところで公然と真っ赤と揶揄されるようなことが教育されるあたり、日本というのは自由というか不思議な国である。
そんな真っ赤な時代に一大勢力を築いていた宇野学派の宇野先生の本である。
旧制高等学校時代に「資本論」に出会ってから、それを読みたい、読もうと思い続けた人生の話は非常に面白い。
「読む」ということが文字をインプットすることではなく、読んで、一つ一つ理解し、「わかり」、さらに疑問点を明確にし、それを解決したり、議論していったりして自分のものにする過程を指していることに感銘を受けた。しかもドイツ語の原書で。
資本論を愛しつつ、盲目的に礼賛するわけではなく、誤りがあればきちんと修正していくべきであり、それこそが学問であるとする真摯な姿勢が数々の講演録から伝わって来る。
まずはわからないところは飛ばしてでもどんどん読み、難しいところは腹が立つまで繰り返し読む、それでもわからないところはわからない。これが晩年のコメントであることに、この先生のすごさを感じる。
こんな風に人生の基盤になるような1冊の本に出会ってみたいものだ。