ついに読み通す
晴れ。終日仕事。
カール・マルクス著、中山元訳「日経BPクラシックス 資本論 経済学批判第1巻4」を読了。
この分冊では労働者の生活環境や食事などのプライベート面の劣悪さや、労働者たちがどのようにして出現したのかといったような歴史の話がメイン。
非常に具体的に解説される住環境のあまりのひどさに絶句。
狭い空間に人がこれでもかと詰め込まれ、伝染病が大流行って・・・
羊の放牧のために土地を追われ、仕事にあぶれて放浪していたら浮浪者として犯罪者扱いされて厳罰に処され、仕事についたならついたで死ぬまでこき使われるわ、あれこれ理由をつけて給料ピンハネされたり、減らされたり、口答えすれば監獄に放り込まれ・・・
土地はどうなったかといえば、いつの間にか放牧地から狩猟を楽しむための場所に鞍替えしてみんな荒野に戻ったという・・・なんと笑えない。
経営者が極限まで利益を追求するとこんな感じになるということがこれでもかと紹介される。
そんな世界の中でこの本が出て、ソ連が成立し、イデオロギーのせめぎ合いや労働運動の中で、福祉の概念が出るようになり・・・
今の日本なんて、この中で書かれているイギリスに比べたらはるかに住みよい世界だ。
マルクスがこの本を書きながら、とんでもないと思っていたような社会環境は今となってはだいぶましになったのではないだろうか。
4分冊をやっと読み通して、実はこのシリーズは資本論の第1巻しか扱っていなかったことにいまさら気がつくという・・・・
2巻、3巻は例の伝統的なやつを買ってきて読むしかないのか。
通して読んでみて、筆者は英語もフランス語もラテン語も使いこなし、いろんな古典作品にも通じている当時のちゃんとした知識人なのだと思った。
基本的に毒舌だけど、ところどころユーモアあり、皮肉あり、悪ノリあり・・・ジャーナリストであったこともあって、当時の労働者のルポ的な記述なんかは非常に読みやすいし引き込まれる内容だった。ときどき高尚すぎる例え話にはついていけなかったが。
個人的には共産主義者でもなんでもないし、むしろこの国の左寄りの政党のよくわからないスタンスや共産主義国家のはちゃめちゃぶりは何から来るのだろうという興味で読んでみたのだが・・・・なんかこの本の内容とはだいぶ違うな。
2巻や3巻を読むとまた何か話が動くのだろうか。
当時の実態をかじるためのルポとしては非常によくできていてとてもためになった。