Noels Tagebuch

日々のつぶやきと読書記録、たまに旅行記

知っているようで知らないこと

晴れ。半日仕事。

 

ようやくトマ・ピケティ著「21世紀の資本」を読了。

 

様々なデータを基にして、第一次世界大戦以前と格差の構造はほとんど変わっていないという話が延々と続く内容に読んでいて気が滅入ってくる。

 

二度の戦争で何もかもがぶち壊しになったものの、長い時間をかけてまた元に戻りつつあるという・・・

 

アメリカンドリームなんて本当に最初の短期間を除いて、嘘もいいところだと書かれていたのも印象的。

 

少し前に日本でも東京大学に入学するのは富裕層の子弟が多くて不公平みたいな記事が出たことがあったが、この本を読んでいると何でそうなるのかも何となくわかる気がした。

 

本文には所々に小説からの引用やたとえ話があったり、不労所得者に対するコメントが否定的だったりするのを見ていると、マルクスの「資本論」を想起させるが、当の本人は「資本論」を読んでいないらしい。でも、実は読みきれていないという意図での発言で、字面は確実に追っているように思えなくもない。

 

金持ちに重税をかけて、社会で富を再分配するという発想は、金持ちからしたらとんでもない話だという批判が出るのは当然だし、本当にそんなことが起こったら、みんなやる気をなくして、生産性が落ちるだろうと思えなくもない。この本がアメリカで評判になったのはとても不思議だ。

 

それにしても戦争という武力闘争によって、一時的にせよ格差が少し解消された時期があったなんていう研究結果は、一部の人たちからしたら皮肉以外の何物でもないな。

 

ジョン・コーンウェル著「ヒトラーの科学者たち」を読み始めた。

 

前に「二つの大戦の裏面史:日本が知らなかった真実」を読んで、フリッツ・ハーバーのイメージが大きく変わったのだが、この本ではもっと発見がありそうだ。

 

↓これが読了した日の記事。

ameblo.jp

 

ハーバーは、理系の人間なら誰でも一度は聞いたことのあるハーバー・ボッシュ法というアンモニア合成法でノーベル賞を取った人だ。

 

化学の勉強をしていれば、無機化学工業のところで必ず勉強することで、誰もが知っている。でも何でこれが画期的な反応で、なぜ教科書では連続してオストワルト法をいうアンモニアから硝酸を合成する方法が連続して解説されているのかについては一切言及がない。

 

実はこれ、二つの反応を使って、空気から爆弾の原料を大量に調達できてしまうという、ある意味でとんでもない化学反応である。

 

この反応ができる以前は硝石の輸入が爆薬製造には不可欠だった。第一次世界大戦では硝石が取れないドイツに対して当然のごとく、禁輸措置が取られたものの、この反応による大量の硝酸製造が可能であったために全く意味がなかったという。

 

こういう歴史的経緯を解説すれば、無味乾燥な化学式の羅列と無謀な暗記に走りがちな無機化学の学習も少しは興味を持ってできそうなものだけど。

 

ちなみに、大戦中には毒ガス開発にも従事して「化学兵器の父」という全く穏やかでない異名もあるようだ。