Noels Tagebuch

日々のつぶやきと読書記録、たまに旅行記

価値観の違い

くもり。終日仕事。

 

やっぱり技術と経験は何かあった時にこそ発揮されるものとつくづく思った1日。

 

大川周明著「日本二千六百年史」を読了。

 

著者の大川周明は、戦前の大物思想家であり、昭和維新と称する一連のテロ事件や大東亜共栄圏の構想に関わった人物。戦後は東京裁判で東條英機の頭を法廷で叩いたことで有名になってしまったが・・・イスラム教研究も有名。

 

ちなみに頭を叩いている瞬間はYou Tubeで見ることができる。

 

二千六百年とは、1940年が初代神武天皇が即位してちょうど2600年目にあたることによる。出版当時の1939年は、国家プロジェクトとして紀元二千六百年記念行事が行われていた時期であり、当時のブームにあやかったタイトルと言えそう。ベストセラーになったのもなんとなく理解できる。

 

鎌倉幕府の北条家や北朝を支持した足利氏を比較的公平に評価しているのは当時の価値観からするとかなり斬新な試みであり、戦国時代の皇室の荒廃ぶりをありのままに記載しているのもすごいことである。

 

もちろん、検閲でほとんど削除されてしまっているが。

 

儒教的な価値観に基づくエピソードや、豊臣秀吉の外国遠征へのスタンスなど、今とは違う価値観で書かれた論を読むのはある意味で新鮮。

 

江戸時代に関する記述はもっとも充実していて、内容も深いが明治以降はまだ評価も定まらず、資料も少なく、大日本帝国体制の中にあって書きにくかったのか、ほとんど記載はない。

 

昭和に関しては、いわゆる昭和維新や大東亜共栄圏を想起させるような内容となっており、これがベストセラーになった当時の世相の一端を感じることができる。

 

読むにあたっては当時の歴史的背景を十分に理解することが必要と思われる。